オーストリアの公立大学に勤めながらの子育てが始まる.今日から1ヶ月程度の育児休暇を取った.この記事は育児休暇を始めるまでの覚書.
はじまり
安定期に入る少し前くらいに上司に子供ができたことを伝えた.論文や学会のスケジュールに影響があるので事前の相談が必要と思ったが,やはり安定期になるまでは待った.「それはおめでとう!分からないことがあれば聞いてくれ」と2人の子を持つ上司は優しく受け入れてくれた.この時にはまだ「育休をいつか取らないといけないね」というくらいに簡単に育児休暇について触れられたくらいだったと記憶している.
この頃から色々と情報収集し始めた.主なリソースは友人やWeb情報だ.あくまでも個人的な感想だが,参考になった順で書くと以下の通り.
予定日の約2ヶ月前
予定日の2ヶ月前くらいに上司から「ところで,育休はどのくらい取るの?」と聞かれた.「あぁ,上司として何か申請処理とか必要なのかな」と思った.去年に同僚が2ヶ月くらい取っていたこともあり,それはちょっと長いかなと感じていたので「どのくらいだろう... 1ヶ月とか?」と伝えると「1ヶ月で足りるの?」という第一声.
参考になるケースが少なすぎて正解が分からない... 正解なんてないのだろうけれど.「正直,どのくらい必要なのかあまり検討がつかない」と言うと,上司は「うちは予定日の4週間前に産まれたし,どうなるかは分からないから,とりあえず1ヶ月ということにしておいて,必要ならその後に延ばすということにしよう」と落ち着いた.
予定日の約1ヶ月前
またひと月くらい経って,上司から「1ヶ月の育児休暇に入る予定になっているけれど,何日から取り始める?」と聞かれて,とりあえずの日を伝えた.予定日を間に挟んで1ヶ月くらいを設定した.「ところで,育児休暇に何か特別な申請はいるの?」と聞くと,上司曰く「正直よく分かっていない.去年取った人に聞くといいよ.もしくは秘書さんがよく知っているはず」とのことだった.どうやら,上司として何かしないといけない訳じゃないらしい.
「子供が産まれる = 育児休暇の取り方 + 補助金の種類」を決める
ということで,先の情報源から色々と得た知識を集約すると,子供が産まれるとお休みのこと(育児休暇)とお金のこと(補助金)の2つを決める必要がある様子.
「お休み」の選択肢
オーストリアでは育児休暇は基本的に2ヶ月以上が想定されている様子.そうでなければ,最大3日の出産のための特別休暇か有休をまとめて消費する,となる.最近ではPapamonat(お父さんの月)という制度もできている.まとめると,以下のようになる.
- いわゆる育休:最低2カ月取らなくてならず,最大で2年まで取得可能
- 有休消費:年200時間(1日8時間換算)の内,好きなだけ消費する
- 特別休暇(出産):最大3日間が出産後に申請可能になる
- Papamonat:月700€もらって1ヶ月休む.金銭的なメリットがないように見えるが,友人曰く「お金が貰えて休めるならめっけもん」
詳しくはオーストリア政府のWebページに英語でまとめてある.大変ありがたい.政府や大学の文書を見ていると,どうやら長期に休んでも仕事を失うことがないことが保証されているということが最重要のようだ.
最終的に私は有休を利用することを選択した.
「お金」の選択肢
子供が産まれると,金銭的なサポートについても何等か選択する必要がある.詳細は子供が産まれるまではっきりしないところがあるので簡潔に.
- 育児手当 (Karenzmodelle):4つくらいあるモデルから選択する.夫婦どちらか一方が受けられ,働いているかどうかによっても金額が変わる
- 家族手当 (Familienbeihilfe):18歳になるまで,子供に対して支給される
日本での育児休暇との比較
ほぼ同時期に子供が産まれた人を含む複数のエンジニア系の友人に有休をどのように使う予定か聞いてみた.
- 周りに誰も取っていないから分からない
- 取った人もいたが,その人は転職してしまった
- 有休を少し使う程度にする
このくらいが主な意見だった.日本では未だに育児休暇が取りにくいと聞いていたが,どうやら本当らしい.私の場合の様に,上司自ら育休について言及するようなことはないのではないだろうな,と想像している.恵まれた環境で感謝しています.
番外編
大学から子供を迎える人への準備セットを頂いた.ゴリラみたいなたたずまいのキリンのぬいぐるみがキュート.内容は冊子や赤ちゃんグッズだった.